ハピネスをデザインする

ブータンでファミリーデーをデザインする。

2024年5月、Digital Architecture Lab(DAL)はHappiness Capital (ハピネスキャピタル) と共に1年間の旅をスタートしました。このパートナーシップにおける最初のマイルストーンは、ブータンで開催されるハピネスファミリーデーという代表的なイベントの企画と開催に取り組むことでした。この記事では、チームメンバーであるDaum、Oliver、Zoeが、デザインプロセスを振り返り、舞台裏の洞察を共有し、この有意義なパートナーシップの今後について探ります。

ハピネスキャピタルについて

ハピネスキャピタルは、李錦記グループ傘下でグローバルな投資活動をするベンチャーキャピタル企業であり、B Corp認証を取得しています。また、投資家の利益とステークホルダーのハピネスを同時に最大化するという、独自の二つのミッションを掲げている点が特徴的です。

ウェブサイトに記載されている通り、ハピネスキャピタルの投資哲学は以下3つの基本的な理念に基づいています:

  • ミッションに共鳴するスタートアップやVCファンドへの投資を通じて、より幸せな起業家エコシステムの構築を支援します。
  • 「6677の精神」は、短期的な課題に直面しても革新を受け入れ、長期的な視点で投資を行っています。
  • ハピネスリターンと財務的なリターンを同等に重視することで、持続可能で拡張性のあるポジティブな変化を生み出しています。


ハピネスキャピタルのポートフォリオは、この変革を目指す取り組みへの強いコミットメントを反映しています。注目すべき投資先には、2023年にTime’s Best Inventionsに選ばれたClearSpace (クリアスペース) や、微生物を活用したバイオマテリアル開発の先駆者であるGozen (ゴゼン) が含まれます。ブータン訪問中には、ゴゼンの革新的な技術(発酵によって微生物が生成したヴィーガンでプラスチックフリーな素材)が、ブータンの国王王妃両陛下に紹介されました。


コラボレーション

ハピネスキャピタルの独自のアプローチである「測定可能なインパクトを生み出しながらハピネスを育む」という理念は、人間の成長のためにDALが掲げる「理論より実践」の枠組みと自然な形で調和しています。両組織は基本的な信念を共有しています。意味のあるインパクトを生み出すためには、従来の指標を超えて、人々の生活を豊かにする要素を測定するための実証的な方法を開発する必要があるということです。私たちの有機的で喜びに満ちた体験を創造するノウハウは、ハピネスキャピタルの使命と深く共鳴し、2つの主要な取り組みに焦点を当てた1年間のパートナーシップを築くきっかけとなりました。

  1. ブータンで開催されたハピネスファミリーデーは、私たちにとって初めてのプロジェクトでした。このイベントでは、李ファミリー、起業家、投資家、パートナーたちが一堂に会し、ハピネスキャピタルの年次集会が行われました。ブータンの首都ティンプーを舞台に、「持続可能なハピネスに向けたマインドフルな旅」というテーマが見事に体現されました。
  2. 日本市場におけるデジタル戦略として、私たちはハピネスキャピタルの日本でのデジタルプレゼンス拡大に取り組んでいます。これには、日本語ウェブサイトとNoteアカウントの運営管理が含まれます。


ハピネスファミリーデーの体験型アーキテクチャ

2024年9月、DALはハピネスキャピタルのために120名が参加する、ファミリーデーを主催しました。これまでチーム内のリトリートはデザインしてきましたがクライアントのための「体験型アーキテクチャ」創造は今回初めての挑戦でした。

DALにおける体験型アーキテクチャは、コミュニティの絆を強化し、参加者間に有機的なつながりを育むことを目的とした体験を指します。私たちは、個々の人々が自然に集まり、経験を共有し、有意義な関係を築けるような環境、デザイン、ツール、活動を作り出します。構造化されたネットワーキングで交流を強制するのではなく、真の対話のための「空間」を探求することによって、コミュニティ内で相互理解が自然に生まれることを目指しています。

ハピネスキャピタルの哲学の中心には「We (私たち)> I(私)」という概念があります。李錦記グループのChairmanであるSammy Leeが強調するように、「We(私たち)」は、個々の人々がチームとして団結したときに強力な物語となります。この基本理念は、ファミリーデーの集いのあらゆる側面に影響を与え、単なる指針としてだけでなく、体験そのものの本質として機能しました。

この集合的な哲学を実現するために、DALはコミュニティを築くファミリーデーを創造するための多層的なアプローチを開発しました。まず、グループのロジスティクスを管理しながら、つながりを育むためのビジュアルとアプリケーションをデザインしました。現地ブータンのエージェンシーDheyma (デイマ) やさまざまな地元の人材と連携し、旅程、交通手段、コミュニケーションチャネル、イベント映像の記録を計画しました。さらに、ハイキング、アイスブレイク、ハピネスの特製グッズが揃ったフォトブースなどのアクティビティを企画しました。最後に、来年のファミリーデーに向けたフィードバックと洞察を得るためのイベントアンケートを実施しました。

a) イベントのビジュアルデザイン – Zoe

私たちはビジュアルストーリーテリングから始めました。ハピネスキャピタルのブランディングエージェンシーであるRelish (レリッシュ)  と、DALのクリエイティブデザイナーZoeが協力し、哲学的な原則を魅力的なビジュアルへと昇華させました。

私たちの目標は、ハピネスキャピタルの新しいブランド要素と伝統的なブータンの美学が調和するビジュアルアイデンティティを創造することでした。そのテーマは「持続可能な幸福に向けたマインドフルな旅」です。ビジュアルの詳細はこちらでご覧ください。デザインプロセスは、次の主要なフェーズに沿って進められました;

1. ブータンの文化に関する広範な調査を行い、日常生活、食文化、伝統、衣服、信念体系を詳しく調べました。

2. ハピネスキャピタルのブランド要素(価値観、ポートフォリオ、既存のカラーパレットなど)について包括的な分析を行いました。

3. すべての素材に統一的に適用するためのカラーシステムの開発を行いました。


デザインは、ハピネスキャピタルのブランドパレットとブータンの祈りの旗の色を融合させました。白(幸運)、黄色(勝利)、赤(願いの成就)、青(健康)、緑(慈悲)を取り入れることで、企業のアイデンティティと文化的象徴の両方を尊重するビジュアル言語を創造しました。

4. ハピネスキャピタルのイベントのためのコアデザイン原則は、サステナビリティと廃棄物削減でした。イベントの資材がしばしば使い捨てのゴミとなってしまうことを認識し、以下のような環境に配慮した制作戦略を実施しました:

  • 慎重なギフト選定として、実用的で即効性と長期的な目的を兼ね備えたアイテムを選ぶことで、企業ギフトの概念を再考しました。一般的な企業用グッズの代わりに、質の高い今治タオル、伝統的なバンチュン籠、インフィニタスティー、地元で作られたターキンの人形を厳選しました。
  • 革新的な紙の節約として、日本の折り紙技術を活用し、1枚の紙から複数ページのパンフレットを作成することで、紙の無駄を最小限に抑えました。さらに、スケジュールや参加者情報を詳細に提供するために、Notionなどのデジタルプラットフォームを活用し、紙の使用量を大幅に削減しました。

5. イベントのビジュアルコンセプト化では、「マインドフルな旅」や「持続可能な開発」といった抽象的な概念をビジュアルで表現することがユニークなデザインの課題でした。この課題を克服するために、私たちはまず、マインドフルネスと持続可能性に関連する言語やイメージのマップを作成し、ビジュアルの語彙を構築しました。

  • デザインの基盤:コンセプトは3つの主要なテーマに基づいています:「Co-」(創造、運営、存在)、「福祉」、および「エコシステム」です。これらのテーマは循環型の持続可能性と共同の進展を強調し、経済発展がどのように人々と社会の両方を育むべきか、そして共同の幸福を支える繁栄するエコシステムを生み出すべきかを示しています。
  • ビジュアル表現 : 私たちはパロからティンプーへの物理的な旅を木の形をした道として表現しました。これは、人々のつながりと持続可能な成長を象徴しています。道は色と葉で豊かにされ、歴史的な共創とマインドフルな認識を表現し、木は持続可能性とコミュニティの集まりを体現しています。
  • 適用 : 最終的なデザインは、物理的なパンフレットや名刺からリストバンド、フォトブースの背景に至るまで、すべてのイベント資料に適用されました。ビジュアルのストーリーテリングは、参加者の体験全体を通して一貫性を保ちました。


b) 心のこもったおもてなし

イベントのあらゆる側面において、参加者が心からのもてなしを感じられるよう慎重に調整し、小さなディテールにも気を配りました。例えば、アレルギーアイコンを表示した名刺や、ハピネスキャピタルのカラーパレットとブータン文化に調和した色分けされたバスの識別システム、会話を促すためのカード、飛行機内で子供向けに渡したターキン人形など、実用的な配慮が随所に見られました。デザインは、持続可能性やマインドフルネスというテーマに一貫して調和し、さらにハイキング中の高山病対策として、日本のチョコレートや電解質パウダーを提供するなど、思慮深いケアも提供しました。


c) 遊び心を取り入れる – Oliver

遊び心がありながらも意図的なデザインの選択を通じて、イベント体験を充実させ、参加者のエンゲージメントとつながりを促進しました。日本の扇子は、グループ識別の役割を果たすだけでなく、フォトプロップスとしても活用され、日々の会話カードや企業ロゴが入った拡大鏡シート付きのフォトブースが、参加者同士の交流に記憶に残るひとときを加えました。

マシュマロチャレンジは、昼食後に参加者を活気づけました。チームはマシュマロとパスタヌードルのみを使って、最も高い塔を作ることに挑戦しました。この遊び心のあるエクササイズは、起業家精神の旅を反映しています。リソースの制約と共同作業による問題解決を通じて革新が生まれることを象徴し、参加者にチームワークの重要性と創造的思考の力を体験することができました。



感謝と成果

このイベントの大きな成功は、総合満足度9.8に反映され、一人の参加者は「30年のビジネス経験の中で、これは間違いなく最もよく組織され、よく考えられた旅行の一つだ」と述べました。この感想は、私たちのWhatsAppグループで共有された多くのLinkedIn投稿でも数多く見られました。この成功を可能にしてくださったすべての方々に深く感謝いたします。革新的でエネルギッシュな参加者の皆様、信頼してパートナーシップを結んでくれたハピネスキャピタル、素晴らしいおもてなしをしてくださったデイマ、そしてブータンで温かく迎えてくださった国王陛下に、心から感謝申し上げます。

今後の展望

タイガーズ・ネストへのハイキング後の思いがけない寄り道は、DALで私たちが目指す体験型アーキテクチャの本質を見事に体現しています。「正しい道は常に正しい」という遊び心のある知恵に導かれた「間違った」道を進んだ結果、私たちは隠れた寺院に辿り着き、そこでの僧侶との偶然の出会いが、この失敗のように思えた冒険を特別な体験へと変えてくれました。古代の仏像を見学し、聖水を飲み、天日干しの唐辛子の間を歩きながら800年前の物語に耳を傾ける中で、私たちは、真の繋がりはしばしば計画外の瞬間から生まれることを実感しました。この偶然の出会いは、私たちの核となる理念を示しています。真の体験型アーキテクチャはすべての詳細をコントロールすることではなく、魔法が自然に起こる空間を創造することだということです。時には「迷子」になることが、最も意味深い発見へと導いてくれるのです。

同様に、ハピネスキャピタルとのコラボレーションは、体験型アーキテクチャへの理解を深め、真のコミュニティは誠実で心からの交流を通じて生まれるという信念を強化しました。2025年に向けて、私たちは、起業家のストーリーやコミュニティの関与を通じてハピネスキャピタルの日本におけるデジタルプレゼンスを拡大し、ハピネスチームやレリッシュと密に連携しています。今後、私たちは体験デザインを3つの方法で進化させることを目指しています。第一に、参加者が実務的な心配なしにその瞬間に没入できるよう、よりシームレスなロジスティクスを提供すること。第二に、共有や反省を促す豊かな多感覚体験をデザインすること。第三に、意味のある会話や個人的な洞察を自然に引き出し、より洗練されたインタラクションのきっかけを開発することです。これらの学びは、ブータンでの経験を基にして今後のプロジェクトを導き、体験型アーキテクチャへのアプローチをさらに洗練させていくでしょう。


私たちの旅のハイライトは、ブータンの国王王妃両陛下を歓迎夕食会にお迎えできたことでした。その際、ゴゼンが製作したバレンシアガのコートを進呈させていただきましたが、大変ご好評をいただき、翌朝には思いがけず国王陛下が私たちのビジネスプログラムを訪問してくださると言う光栄に恵まれました。




Daum Kim is the Deputy Architect at DAL (daum@dalab.xyz)

Illustration:  Asuka Zoe Hayashi
Edits:  Janine Liberty

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