経済同友会web3イベント:DALのセンシビリティを取り入れたイベントデザイン

NFTを活用した体験で、企業経営者のweb3理解度を向上

新しいテクノロジーを学ぶには、単に観察するだけでなく、実際に自分が体験してみることが必要です。Digital Architecture Lab(DAL)では、主要な日本企業の経営者がweb3を自身のビジネスに取り入れるための実践的な体験を提供しています。2024年4月3日、私たちはCrypto Cafe & Barにて、経済同友会のweb3イベントを共催しました。企業経営者(約50名)、web3スタートアップ企業、政治家が一同に会し、web3の現状・未来について議論を交わす貴重な場となりました。ここでは、私たちがどのようにしてDALのセンシビリティを活かしながら、全ての参加者が楽しめるweb3の体験やゲームをデザインしたかについてお伝えします。

web3イベント企画の背景

はじめに、経済同友会とはどんな組織なのか、ご存知ない方のために簡単に紹介させてください。経済同友会(以下、同友会)は、日本経済団体連合会、日本商工会議所と並ぶ「経済三団体」の一つで、企業経営者が個人の資格で参加し、国内外の経済社会の諸問題について一企業や特定業界の利害にとらわれない立場から自由に議論し、見解を社会に提言することを目的に活動を行う公益社団法人です。そして同友会の「企業のDX推進委員会」の委員長を、我らがチーフアーキテクト・伊藤穰一が務めているのです!!

海外に限らず国内でも様々なプレイヤーがNFTを含め活躍の場を広げている中で、日本そして経営者としていち早くweb3について学び、体験し、理解を深める必要があることから、2023年11月に同委員会内で「web3プロジェクト」が始まりました。約6ヶ月間に渡り、伊藤およびDALがこのプロジェクトをリードし、昨年11月にはキックオフとして、同委員会メンバーを対象に、DALによるweb3ワークショップが開催されました。事例を交えながらweb3の概要を解説した上で、ウォレットの作成やNFTの受け取り方などについてのレクチャーも行いました。その他にも、DALがデザインした同友会独自NFT(下の画像)を毎月の委員会会合にて配布するなど、web3のワクワク感を実際に体験してもらう取り組みを続けてきました。そして、同プロジェクトの集大成として企画されたのが、今回実施したweb3イベントだったのです。

コイン型の同友会NFTを毎月の会合で配布。参加者全員がミントできるPOAPと、会合終了後に答えるweb3クイズの正解者のみがミントできるNFT(回転する3DのNFT)の2種類を毎月発行しました。


どのようにイベントをデザインしたのか?

さて、スーツ&ネクタイが当たり前で、web3の分散型とは真逆のイメージ(勝手なイメージですが…)がある大企業の経営者約50名全員が楽しめるイベントを、かなり自由で個性豊かな面々が揃う分散型組織のDALがデザインするというのはミスマッチなのではないか?と一瞬思ってしまったことは否めませんが(笑)、幸いなことに同友会側から「普段の会合とは全く違う雰囲気のイベントにしたい」との意向があったため、反対にDALの特徴である”遊び心”を存分に発揮しよう!という気持ちで、イベントのコンテンツやゲームの内容についてチームでブレインストーミングを行いました。

最初に、イベントの目的として同友会から伝えられたのが以下の2点です。

  1. 経営者が自らweb3を「知る」と「触る」ことで仕組みを学び、理解を深める(web3の世界感、ユースケース、トークン経済の仕組みなど)
  2. web3の面白さやワクワク感をリアルに体験しながらネットワークを広げる(web3体験、実際に取り組んでいる方とのネットワーク)

これに加え、前提としてweb3についてまだ理解ができていない参加者や、NFTを一個も保有していない方もいたため、そのような方々も含めて幅広い層がこのイベントでの体験を楽しめるようにすることに焦点を当てる必要がありました。また、NFTを単なるポイントシステムやトークンだと参加者が感じてしまうことは避けたかったため、その点も大きな課題となりました。

参加者のweb3に関するリテラシーレベルが多様であることを踏まえ、イベントの構成を、「web3についての知識が深まる有識者による対談」「NFTを活用したゲームを取り入れたweb3体験」の2つに分けることとし、有識者による対談として2つの対談が企画されました。


web3についての知識が深まる有識者による対談

1つ目の対談では、スピーカーに平将明 衆議院議員(自由民主党 デジタル社会推進本部 web3PT座長)と川崎ひでと 衆議院議員(自由民主党 デジタル社会推進本部 web3PT事務局長)をお招きし、2023年に公開されたホワイトペーパーを基にweb3に関連する政策や日本の現状について整理をし、今後の日本の戦略について伊藤穰一と共に議論をしました。政治家側の企業経営者に対する期待、企業経営者側の政治家に対する期待をお互いにぶつけ合う場面もあり、白熱する時間となりました。

(写真左:伊藤穰一、写真中央:平将明 衆議院議員、写真右:川崎ひでと 衆議院議員)


2つ目の対談は、「Weekly gm 特別編」です。Weekly gmは、毎週金曜日10:00からJoi Ito’s YouTubeにてライブ配信される伊藤穰一がホストを務める番組で、web3やNFTに関する最先端の取り組みについて企業や市町村の方々にプレゼンテーションを行っていただくオンラインディスカッションの場です。今回の特別編では、コムギさん(web3リサーチャー)によるweb3ニュースまとめの後、現在のトレンドや今後のシナリオなどについて、西村真里子さん(株式会社HEART CATCH 代表取締役)も交えながら議論を行いました。アーカイブ動画は、こちらをクリックしてご覧ください!

普段はバーチャルなコムギさんがこの日は会場から参加!”生コムギさん”を見れることはかなりレアなので、密かに嬉しい出来事でした。

Weekly gm終了後に乾杯!お酒を交えた交流は、経済同友会ではなかなか珍しいみたいです。


NFTを活用したゲームを取り入れたweb3体験

さあ、ここからがDALの腕の見せどころ、web3を体験するネットワーキングの時間です。

過去の会合でミントした同友会NFTを複数持っている人からウォレットをまだ作成できていない人まで、全ての参加者がweb3を体験し楽しめるよう、3つのNFT企画を考えました。


1. 豪華プレゼント付き!同友会NFT大抽選会

企業から豪華景品を集め、NFTを使った”ガチャボール抽選会”を実施しました。これは、保有しているNFTの数の分だけ、箱に入っているガチャボールが引けるゲームで、それぞれのカプセルの中には景品が書かれたくじが入っており、その景品を持ち帰ることができるというシステムです。同友会NFTを全く持っていない人には、会場に用意したPOAPをミントしてもらい、1回は抽選会ができるように設計しました。単純なシステムではありますが、この抽選会のデザインおよびオペレーションを担当したZoe(イラストレーター)とOliver(コミュニティデザイナー)が、かわいいハットを被りながら、活気に満ちた雰囲気を創り出しました。

実は、NFTをタップすると自動で回るガチャガチャを用意するという素晴らしいアイデアがあったのですが、技術的な難しさと時間がかかることから今回は断念…。次回はそれに挑戦したいです!

企業経営者の皆さんも、ガチャボールを選ぶときは童心に帰ったような表情で、とても楽しんでいました。豪華な景品が当たった際のベルも、とても良い働きをしていました!


2. ブースを回ってNFTを獲得!サントリー特製ハイボール


会場内に設置された3つのブース(東京ドーム、西会津町(石高プロジェクト)、サントリー)すべてにNFTディスクを置き、ブースをすべて周りミントすると、サントリーの特製ハイボールがゲットできるよう設計しました。NFTを持っていない方のミント体験を促すことができるだけでなく、このようにインセンティブを設けることで、ブース出展者と参加者の交流を活性化することができました。

東京ドームブースの様子。NFTをきっかけに、出展者と参加者の交流が生まれやすくなることを改めて感じた瞬間でした。


3. 同友会NFTを4つ以上お持ちの方に当たる!スペシャル 3D NFT

以前から繋がりのあった並河進さん(電通 カスタマーエクスペリエンス・クリエーティブ・センター センター長/エグゼクティブクリエーティブディレクター/詩人/デジタルアーティスト)に、金色の龍が空を舞うARトロフィーを制作いただき、同友会NFTを4つ以上保有するホルダーに贈呈しました。
ARで見られるサイトも作っていただきましたので、ぜひご覧ください!→ ARを体験する(iPhoneのSafari/AndroidのChromeでのみ閲覧可能)

スペシャル 3D NFTとなった、金色の龍が空を舞うARトロフィー。今年は辰年なので、縁起もいいですね!


そしてそして、忘れてはいけないのがケータリングです。いつもお世話になっているBreakfast Clubにお願いをしたフィンガーフードはどれも美味しく、見事にイベントに華を添えてくれました。

Breakfast Club、いつもありがとう!



収穫と今後の展望

最初は、大企業の経営者が約50人来ると聞いてみんなビクビクしていましたが、DALがつくり出す、フラットで遊び心に溢れた雰囲気は、役職や社会的地位など関係ありませんでした。運営側の自分たちも楽しむことが大切というDALの精神を常に忘れず、楽しみながら運営したことで、その雰囲気が会場にも伝染し、会場一体として良い空気感に包まれたのだと感じます。
また、会場として使用した、「大人のPlayground」をテーマとするCrypto Cafe & Barの雰囲気も、DALのセンシビリティを取り入れた雰囲気づくりに大きく寄与してくれたことは間違いありません。

実際に参加者からも、web3についての理解が深まったというポジティブな意見が多く集まりました。

  • web3の世界観が理解できてよかった。
  • web3ホワイトペーパーやDAO協会の取り組みについて知ることがなかった。政治家や民間企業も少しずつ動いていることがわかった。
  • 自らNFTを獲得する体験ができてよかった。普段はあまり触れることもないし、仕組みも含めて理解をしやすかった。
  • NFTを取得、抽選券承認、商品交換のプロセスが実際のビジネスとのイメージがしやすかった。
  • 東京ドーム、石高プロジェクト、SAKAZUKIなど企業自治体がそれぞれ想いを持ち、プロジェクトをしていることが印象的であった。経営者ではなく、実務に携わる方からのプレゼンは熱いものを感じた。
  • 学び、体験できる会場やプログラムが非常にありがたい。


最後に、DAL x 経済同友会のコラボレーションの今後については、web3にかかわらず、最先端のテクノロジーについて分かりやすく発信し続け、体験の場を提供しながら、会員の皆さんそれぞれのデジタル感性を創造するサポートができればと考えています。

また、私は今回のイベントで、DALが実践する”フラットで自由で遊び心溢れる雰囲気づくり”や”デジタル感性を育てるための対面イベントのデザイン”は、DALの大きな強みであることを強く実感し、まだまだお堅い日本企業に与えるインパクトの可能性を感じました。


あとがき

イベントの数日前、Oliverが「イベント用の帽子を買いに行く」と言って外出しました。皆、三角コーンのようなパーティハットを想像していたのですが、なんと彼が買ってきたのは、ポケモンのキャラクターの帽子でした!!日本人の私は、「なぜそれにした?経営者の前で本当に大丈夫か?」と一瞬思ってしまいましたが、心配ご無用。これぞDALなのです!




Yudai Kachi is the Assistant to the Chief Architect at DAL (yudai@ito.com)

Illustration: Asuka Zoe Hayashi
Edits: Janine Liberty & Joseph Park

More from DAL Blog

DALのコミュニティリードが、多様なチームを超えた同僚同士のつながりを深め、sense of belongingを育むことについて考察する
急速に発展する時代において、技術の進歩と人間の主体性のバランスを探る。
東京で行われたワークショップの振り返り
色の変わるランプがドリンクメニューを決定したら、コミュニティにどのように影響するか

経済同友会web3イベント:DALのセンシビリティを取り入れたイベントデザイン

×