チームの一体感を高めるのに「間」の概念はどう役立つのか

リモートワーク時代のチームリトリートデザイン (Part. 2)

昨年の初め、私たちはPentagram社と協力し、Digital Architecture Lab(DAL)のブランドアイデンティティをデザインするフェーズに入りました。その過程では、DALの核となる考え方である「変革」について深く掘り下げる必要がありました。私たちは、「感性」「アーキテクチャ」「ヒューマニスティックアプローチ」の3つを掘り下げ、これらの概念についての理解を深めました。

気候変動、不況、偏見の拡大、不平等、さらには戦争など、さまざまな分野にまたがる現代の課題は、効率性、成長性、生産性を追求し続けた人間が招いた結果であると主張する伊藤穰一の視点は、新しいデジタルアーキテクチャという概念の基礎になっています。

私のバックグラウンドはソーシャルメディアマーケティングで、「エンゲージメント」はいいね、コメント、シェアといったものに集約されます。このエンゲージメントを促進する戦略としては、通常、これらの数値指標を向上させ、トラフィックを増やすために広告宣伝費を増やすことが多いです。

しかし、本物のエンゲージメントとは何なのか、エンゲージメントを測定するために正しい指標を使用しているのか、といった疑問を私は持ち続けてきました。

私は、真のエンゲージメントとは、交流とお互いの成長を通じて、関係性を持続的に育むことだと考えています。これは、単なる数字や統計では測定できないものです。そのため、私たちのチームは、オーディエンスとの交流や個人間の関係性を築くことに焦点を当てることにしました。しかし私は、現在のソーシャルメディア分析は、エンゲージメントの本質がやや薄れてしまっていると危惧しています。

Pentagram社とのブレインストーミングの段階で、私は自分たちの表現の中にギャップを感じました。自分たちはいったい何を明確化したいのか?この新しいデジタルアーキテクチャに埋め込むべき核となる価値観は何なのか?私たちの価値観を最も忠実に表す言葉は何か?これに取り組むことが私たちの最優先の課題でした。京都で開催した初めてのDALリトリートの重要な目的の一つは、これらの質問に対する答えについてチームで考える機会を作ることでした。


Celebrating the Spaces in Between

最近私は、「人間関係」について父と深く話す機会がありました。多忙な毎日に追われ、私は大切な人との関係が希薄になっているのではないかと心配になり、私の家族でさえ私が遠ざかって行くように感じていました。多くの親しい人は、私が「変わってしまった」と感じていたようです。なぜもっとコミュニケーションをとらなかったのか、なぜ大切な人との繋がりを深められなかったのか、と自分を責めることしかできませんでした。

父との会話の中で、人間関係とは二人の人間の「間」を中心にして回る、という話を父がしてくれました。中国の漢字で「人間」という文字には「間」という概念が含まれており、「時間」にも「間」があるのだと。父は、自分自身の貢献度に固執するのではなく、父と私の間にある形のない「間」をどのように育むのかに焦点を当てるべきだ、とアドバイスをしてくれました。

つい先日参加した武邑光裕先生の講義でも、同じような考え方に出会いました。日本の伝統舞踊では、「間」(空間意識の間、時間意識の間)の概念、つまり空間と時間の両方を意識することに大きな意義があり、演者間の動きの間隔、リズム、タイミング、周囲の環境との繋がりを大切にしているという話がありました。

さらに調べていると、伊藤穰一が2014年に非常に似た概念について議論していました。そこで行われていたのは、すべての科学を大きな用紙の上で視覚化するという内容でした。その用紙の上で、科学に含まれる専門分野を小さな点にして表現していくと、残りのスペースには大きな空白が残ります。この空白は、「脱専門的空間(専門分野に縛られらない空間)」を表します。このことが教えてくれるのは、本当に重要なことは、目に見えるものだけでなく、目に見えないものにも存在するということです。例えば、間を置くことや空間の中で創り出されるリズム、私たちを結ぶ絆、これこそが、繋がりや持続性の本質なのです。

無印良品のアートディレクターであり、哲学者かつデザイナーである原研哉さんは、真の「美」は有形のものではなく、無形のものにあると述べています。それは自分自身ではなく、自然の中で見つけることができるのだと。彼にとって「ない」ことは「ある」ことよりも価値があり、彼の著書『白』では、「ない」ことは単に空虚なのではなく、可能性にあふれた領域なのだと伝えています。

この哲学は、さらに広範なアジアでの「間」の認識と一致します。アジアの美学における「空白」は、人間の精神にもたらすエネルギーとして認識されており、人工的に物を混ぜ合わせるのではなく、本来の姿で互いの尊重と感謝の中で存在することが重要なのです。この空間では、それぞれの違いが単に認められるだけでなく、皆が共存し、調和し、多様性によって豊かな集まりが形成されます。


A Timely Reminder and a Step Forward

では、これが私たちのリトリートにどのように関連しているのでしょうか?DALは、様々な人生経験を持つ人々の集まりです。私たちの中には、プロバビリスティックプログラミングの提唱者や技術者がいる一方、テクノロジーとは何の関係もないメンバーもいます。しかし私たちは、一人ひとりがユニークな物語を持ち結集したとき、非常に力強いストーリーになることを知っています。ジェニー・オデルの著書『何もしない』で、「人間は単なる生産性や効率性だけで評価されてはならない」という言葉があります。誰しもが生まれながらに固有の価値を持っているのです。私たちのリトリートは、参加者がこの思想に思いを巡らせ、純粋な交流を促すことを目的にデザインされました。

私たちはアイデアに命を吹き込み、そのコンセプトを形にしたいのです。

一般的な研究所とは異なり、DALは製品を作ったり、技術的なソリューションを販売するわけではありません。私たちのユニークな立場は、アイデアと価値観を重視し、それをCrypto Cafe & Bar、記事、コミュニティイニシアティブ、プロバビリスティックプログラムなどの多様な媒体に変えることを可能にしています。これらの取り組みを通じて、私たちは人と同じように世界を認識するシステムの設計に貢献しています。

デジタルガレージのような民間企業が私たちのようなラボを育成することは珍しいです。とはいえ、私たちは実際にここにいて、アイデアを具現化し、形あるプロジェクトにする準備ができています。メディア、コミュニティ、ムーブメント、あるいは私たちの感性に基づいた新しいデジタルアーキテクチャの構想など、様々な形で私たちの考えを表現することができます。私たちはこの先も、私たちと世界の間にある「間」を意識し続けたいと思います。なぜなら、こうした形のない繋がりを理解することが、本物の人間関係と目的に根ざした未来を形作るためには必要不可欠だからです。京都でのリトリートは、大切な気づきを与えてくれただけでなく、私たちのミッション達成に近づけるための取り組みにもなりました。




Daum Kim is the Deputy Architect at DAL (daum@dalab.xyz)

Translation: Madoka Tachibana

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